本研究の目的は高エネルギ-研究所に建設された高分解能コンプトン(散乱装置を用いて、単純液体金属(アルカリ金属)ならびに化合物形成液体金属(リチウム-ガリウム合金)における電子運動量分布を調べることにあった。 (1)液体リチウム、ナトリウム金属ならびにその合金について固体状態ならびに液体状体状能にけるコンプトンプロファイルをKEKーPFに設置された運動量分解能0.09原子単位(現在世界最高)の高分解能コンプトン散乱装置で測定した。両金属のコンプトンプロファイムとも液体になるとフェルミ運動量が減少しかつ 運動量分布関数がボケルこと、またリチウムの金属の運動量分布のボケがナトリウエ金属のそれより大きいことがわかった。リチウムーナトリウム合金液体のコンプトンプロファイルは自由電子モデルから大きくずれ、フェルミ面のボケが15%にも達することがわかった。 (2)ガリウムならびにリチウムガリウム合金のコンプトンプメファイルはKEKーARにあらたに設置されたコンプトンスペクトロメ-カ-で測定された。入射X線のエネルギ-は60keVで、運動量分解能は0。12原子単位であった。 Ga金属のコンプトロンプロファイルの形成は固定から液体に温度変化させることにより幅広くなることがわかった。 これはCa金属は固定から液体になるときに体積が減少する現象にまことに対応している。一方 Liga合金のコンプトンプロファイルの固液相転に伴う形状変化もGa金属の場合と定性的には同じ傾向であることがわかった。 またフェルミ運動量の解析よりLi0.9Ga0.1のフェルミ運動量は自由電子近似値に近いことが判明した。 (3) 一方、理諭的アプロ-チとしては擬ポテンシャルに基づくバンド理諭により、インジウム-アンチモン化合物の亜鉛テルル形構造から岩塩構造型への相転移が与えるコンプトンプロファイルが調べられた。圧力により構造が変わり、それに伴い電子的性質も共有結合的性質から金属結合的性質に転移する課程が調べられた。
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