大自由度系の乱れとその統計的性質に関する普遍的法則を実験的に研究した。MBBAのネマチック液晶を2枚の透明電極の間の薄い空間に封入し、両電極管に400Hzの交流電界をかけて電気対流を起こす。この電気対流の流れのパタ-ンは、電界強度と共に規則構造から不規則構造そして対流へと発展する。小数自由度系の乱れはカオスなる概念によってその乱れの普遍性が研究され成功を収めたが、大自由度系においてはこの遷移がとのような普遍性を持つのかを、この系を用いてしらべるのが本研究の目的であった。得られた結果は以下に要約される。 (1)乱れをは構造中に発生するディスロケ-ションの静的分布と動的挙動によって特徴づけられる。 (2)ディスロケ-ション間の相互作用は、クライム型及びグライド型のいずれも構造長程度の短距離力である。 (3)ディスロケ-ションは、その短距離力の内部においてフラクタルクラスタ-を造りそのクライスタ-はランダムに分布する。 (4)規則構造崩壊の臨界点近傍でディスロケ-ションの運動は選択的フリッカ-ノイズを示す。 (5)グリッド構造は振動格子集団であり、位相波が観測された。これは化学反応系以外で初めて見つかったものである。この位相波の発生中心は自己形成され、やがて中心近くにディスロケ-ション対を発生して崩壊する。 (6)この乱れの機構は、時間の対称性と空間の対称性が同時に崩壊した際に生じる新しいクラスに属するものである。 以上、本研究において大自由度系が秩序状態から乱流形態に至る経路に関する新しい発見を行った。
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