ボンホッファ-ファンデルポ-ル(BVP)型反応拡散系における興奮場の自己組織化の研究で平成元年度に得られた成果を報告する。 1.従来、非平衡解放系の特徴は時間的並進対称性の破れ、すなわち、リミットサイクルの出現にあると確認されてきた。このことは系がポテンシァルをもたないことに起因するが、本研究では、空間的に局在した安定なパタ-ンの存在も解放系の最大の特徴に挙げられることが示された。この事実は力学系でラグランジアンが存在しない場合には2次元以上で、安定な局在解が可能であることと密接な関係があり、自然現象で広く普遍的に成り立つものである。 2.BVP方程式はこれまでザボチンスキ-反応などを記述するモデルとして研究されてきた。しかし、本研究の過程で、特殊な極限では驚くべきことに、熱平衡系のメソスケ-ルでの秩序形成、すなわち、高分子共重合体、ラングミュア単原子膜、強磁性薄膜等でのパタ-ン形成のモデルとつながることが示された。 3.非興奮状態が外部刺激により、いかに興奮状態に移行するかは理論的にもまた応用上も重要な問題である。BVP方程式に外部ノイズを加え、局在興奮領域発現のひん度(核生成率)を銃計力学的に研究した。特異摂動法的な考え方を使うと核生成率の形式的な表式が得られるが、その数値を具体的に求めるには、確率分布の定常解を必要とする。 今後の課題として3で述べたポテンシアルがない系での準安定状態の崩壊をきちんと定式化しなければならない。そのため、拡散項を落とした二変数系で詳細な研究を継続中である。また、局在興奮領域間の相互作用と協力現象に関する研究も進行中である。
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