研究概要 |
交付申請書に記載した研究実施計画に基づき次の成果を得た。 1.興奮性を示すボンフォファ-・ファンデアポ-ル型反応拡散方程式において,興奮領域が周期的に並んでいるときのホップ分岐については昨年度報告した。今年度はこの研究をさらに進め,ホップ分岐後のドメイン振動の様子を非線形項をつけ加えた界面方程式から出発して調べた。各ドメインの位相と振幅に対する方程式を導出し,その定常解の安定性を吟味したのち,計算機実験を行なった。特に,3個のドメインが相互作用をしている場合は一様に位相をそろえた振動状態が,パラメ-タを変えると不安定化し,その結果予期しない複雑な運動状態が出現する。たとえば,フェイズロッキングと準周期運動が,パラメ-タ空間上で交互に現われることが明らかとなっている。詳細は現在解析中である。 2.上の反応拡散方程式は興奮促進(活性化)因子と抑性因子との連立偏微分方程式である。活性因子と抑性因子の拡散係数の比を変えていくと,動かない局在した興奮ドメインから伝パするパルスへの移行が起こることが計算機実験で知られている。拡散係数が任意の場合の二つの解の存在条件を解析的に研究した。この場合は特異摂動法が使えず,実際に解を構成する方法でその存在限界を確かめた。注目すべきことは,あるパラメ-タの範囲で,両方の解が安定に存在できることである。このとき,動かない局在解は二つのパルス解の衡突における束ばく状態としてとらえられるのではないかという予想のもとに,現在研究を続行している。
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