移動管内の圧力を高くした時に真空容器内の真空度が低下し、移動管から出射されるクラスタ-イオンが残留ガスとの衝突により壊れている可能性が考えられた。真空容器を改良し10インチの油拡散ポンプを増設し真空度を改良したところ、サイズの大きなクラスタ-イオンの相対強度が増大し、かつ質量スペクトルの再現性も良くなった。その結果、クラスタ-サイズ分布の移動電場依存カ-ブがきれいに得られるようになった。イオン移動度をランジュバンの古典論で近似して移動イオンの実効温度を求めVan't Hoff plotを行った。He^+を核とするクラスタ-イオンのVan't Hoff plotからHe_<n-1>→He_nへのエンタルピ-とエントロピ-の相対的な変化が得られた。いまだ予備的結果であるがその要約を記す。 (1)n〈7ではnの増加と共にエンタルピ-が単調に減少するが、n=6で極小となりn=7で増大し、n=7〜10でほぼ一定でn〉10で減少する。特にn=14からn=15で急激に減少する。 (2)以上の結果からn=2、3に加え、7、10、14が魔法数である。これ等の結果から、ヘリウムクラスタ-イオンはn【less than or equal】14では団体的な安定した原子配列をしていると考えられるが、nが15以上からしだいにHe原子がゆるく結合した液滴的な性質をもつと 本年度中にクライオスタットを改良する予定であったが、Van't Hoff plotが可能になったためにこれまでの実験の再実験が必要になり計画が一部遅れている。現在He^+以外の希ガスイオンを核としたヘリウムクラスタ-イオンのVan't Hoff Plotを得るための再実験を行っている。
|