研究概要 |
本年度,極低温移動管法に関していくつかの問題点が明らかになった。第1に,移動管内イオンの移動度の測定を行ったところ,圧力依存性が現れ圧力測定に問題のあることが判明した。平成元年に行った測定について圧力補正を行った。この圧力補正により,これまでの問題点が解決出来,He^+He_nクラスタ-についてはエンタルピ-の原子数依存性を決定することが出来た。また,X^+He_n(X=Ne,Ar,Kr)については出現電圧の原子数依存性からクラスタ-の安定性について知見を得た。これ等の結果から,X^+He_nクラスタ-のうちX=He,Neでは分子イオンHe_2^+,HeNe^+がまたX=Ar,Krでは原子イオンAr^+,Kr^+がクラスタ-の芯をなしていることが明らかになった。これ等の結果はZ.Phys.Dに論文として投稿した.分子イオンを芯とするクラスタ-についてより詳細な知見を得ることを目的として,移動管にH_2^+,H_3^+イオンを打ち込む実験を開始した.まだ,予備実験の段階であるが,H_2^+とH_3^+を芯とする場合ではクラスタ-の魔法数は全く異ることがわかった。 第2に,液体ヘリウム溜内を減圧することにより移動管温度を下げることを試みた.その結果,温度は2.8Kまでしか下らず,得られた最大クラスタ-の原子数は18であった。より大きなクラスタ-を生成するには,1Kポットを含むクライオスタツトの製作が必要と考え新しいクライオスタツト用真空チェンバ-を製作した。
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