研究概要 |
移動管質量分析計は,移動管部にヘリウムガスを導入して外部から質量を同定したイオンX^+を入射させる。入射イオンはヘリウムガスとの衝突により直ちに熱化し,移動管内部にかけられた電場によって出口方何へ移動する。移動管は液体ヘリウムによって冷却出来るようになっており,イオンと気体との三体衝突によりヘリウム原子が付着してクラスタ-が生成される。移動管出口から出射したクラスタ-のヘリウム原子数を四重極質量分析計によって同定する。この方法を用いて以下の研究を行った。1)希ガスイオンRg^+を核としたクラスタ-RgHe_x^+の安定性。移動管内の電界強度を変えることにより,移動イオンの衝突温度を変えることが出来る。衝突温度を上げると大きなサイズのクラスタ-は衝突によって壊れ出現しなくなるが,その様子は結合エネルギ-に依存する。クラスタ-のサイズ分布の電界強度依存性を測定することによりクラスタ-イオンの安定性に関する情報が得られる。Rg=He,Neの場合にはHe_2^+,NeHe^+がAr^+,Kr^+ではそれ等自身を核とする12面体構造が安定であることを明らかにした。2)H^+,H_3^+を核とするクラスタ-の安定性。H^+の場合にはHHe^+を核とする12面体構造が安定であるが,H_3^+の場合にはX=10と11が魔法数である。3)極低温ヘリウムガス中のイオン移動度の測定。4.4Kに冷却したヘリウムガス中の各種イオン(He^+,Ne^+,Ar^+,Kr^+)の移動度を測定した。いくつかの新しい事実が見い出されたが,特にHe^+の移動度には特徴的なふるまいが見い出された。換算移動度はE/Nの減少と共に増大し約5Tdでランジェバンの古典的に近づくがそれ以下で再び減少する。E/N〈5Tdでの移動度の減少はオ-ビッティング共鳴による散乱断面積の増大に起用すると考えられる。
|