研究概要 |
気候条件が大きく異なる北海道大雪山のヒサゴ雪渓と本州飛騨山脈立山にある内蔵助雪渓の2つの越年性雪渓で水文気象雪氷調査を行なった。調査内容は1.質量収支,2.融雪特性,3.水文特性,4.氷体形成メカニズム,5.植生への影響であった。実施した観測は、1.光波測距・測角儀による雪渓規模の測量、2.雪面融雪熱収支算定のための気象観測、3.雪面低下量、雪面からの蒸発量、雪面の密度・アルベ-ド等の雪氷観測、4.流出河川の水位、流量、水温や降水量、帯水層の水位等の水文観測、5.雪温分布の通年観測、6.植生への影響を調べるための土壌温度の通年観測等である。 これらの観測結果の概略をまとめると、ヒサゴ雪渓では1.雪渓面積は6月下旬から8月下旬にかけて約50%ずつ減少し、さらに9月下旬にかけて約30%減少した。2.雪面低下量は5月下旬から9月下旬にかけて1月にそれぞれ4m、5m、4.5m、1.7mであった。3.1985年から1990年までの雪渓の越年規模は旭川における冬期降水量の平年比、夏期の気温偏差、日照時間の平年比とよい相関がある。4.6月末から9月末の期間を平均して、融雪熱量に対する正味放射量の割合は53%、顕熱伝導量の割合は26%、潜熱伝達量の割合は21%であった。5.融雪量が大きい日は、正味放射量よりも乱気流成分による伝達熱量が大きい時である。6.日平均気温と融雪熱量から長期間推定できる。7.融雪のピ-クに対する流出河川の遅れは約7時間で、帯水層の水位の遅れは12時間である。8.積雪層があると遅れ時間は層厚に関係なく一定である。9.地中流の寄与が小さい。10.一夏に30cmくらいの上積氷を形成し得る。11.氷体の存在は、雪渓の存在を安定化させる働きがある。12.開花に要する日数は、消雪が早い場合は温度であり、それ以外の場合は消雪時期である。
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