グロ-バルな雪氷ー大気・海洋相互作用の研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01460055
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 安成 哲三 筑波大学, 地球料学系, 助教授 (80115956)
• キーワード: 雪氷 / 大気 / 海洋 / ENSO / ABO / モンス-ン / 担互作用

研究概要

インドモンス-ンとENSO(エル・ニ-ニョ南方振動)とのあいだには、密接な関係があることは、既に今世紀の初めから指摘されていた。しかしながら、これら二つの大規模現象が、具体的にどのような物理過程でつながっているかについては、長い間未解決のままであった。研究代表者は、この問題について、最近約20年の西太平洋の混合層水温の変動と、インドモンス-ンの変動の間の極めて高い相関のあることをまず見いだし、この両者の間に介在する気象学的過程の解析を詳しくおこなった。その結果、夏のアジアモンス-ンの変動は、対流活動の変動を通じて、熱帯太平洋上の東西循環を変化させること、その循環の変動は、地表の風応力を変化させることにより、西太平洋と、東太平洋の海水温偏差を、反対の符号で強めること、この海上温偏差によって対流活動は、さらに正のフィ-ドバックを受け、その結果、海水温偏差もさらに強まること、そしてこの過程が、北半球の夏から次の冬にかけて卓越することが明かとなった。そして、次の年の夏には、それまでに形成された海水偏差も作用して、モンス-ンは、前年の傾向とむしろ反対になるという、準2年振動的な変動を示すことも明かとなった。
一方、上記のように熱帯太平洋の大気・海洋系に対し、半ば外力として作用するアジアモンス-ンはまた、前の冬のユ-ラシア大陸での積雪の変動を通じて、北半球の偏西風循環の変動とも、密接につながっている可能性が指摘されていたが、冬の積雪変動が、どの様な物理過程によって、数カ月の時間差をもって、夏のモンス-ンに作用するかについては、未解決であった。研究代表者は、この問題を、大気第循環モデルによって、検証することを試みた。その結果、積雪のアルベド-効果だけではなく、積雪の融雪ー土壌水分の水文学的過程が、冬の異常気象のメモリ-として重要であることが明かとなった。
さらに、上記のような大気・海洋・陸面系における変動の物理過程から、必然的に、熱帯の気候の年々変動の単位年として、北半球夏のモンス-ン期からの一年が、気候学的に意味のある一年であることが明かとなる。このことを前提とした、「モンス-ン年」の提唱するに至った。

研究成果

• [文献書誌] 安成 哲三: "ユ-ラシア大陸の積雪とENSOー雪氷・大気・海洋結合系の提唱ー" 地学雑誌. 98. 83-92 (1989)
• [文献書誌] T.Yasunari: "Monsoon and ENSO ーA Coupled Ocean/Laod/Atmosphere System." Proc.International TOGA Scientitic Conference.WMO. No379. 111-120 (1990)
• [文献書誌] Yasunari,T.Kitoh,A.Tokioka,T.: "Role of Eurasian Snow Cover on the Spring and Summer Climate of the Northern Hemisphere ーA Study MRI GCMー" J.Meteorological Society of Japan. 69. (1991)
• [文献書誌] T.Yasunari: "Impact of Indian Monsoon on the Coupled Atmosphere/Ocean System in the tropical Pacific" Meteorology and Atmospheric Physics. 41. (1991)
• [文献書誌] T.Yasunari: "The Monsoon Year ーA New Concept of the Climatic Year in the Tropics" Bulletin of the American Meteorological Society. 72. (1991)
• [文献書誌] T.Yasunari: "Role of Monsoon on Global Climate in "Water and The Earth"" Deepak Pub., (1991)