研究概要 |
1.速水は,前年度より行ってきた流体力学的実験による遊泳性イタヤガイ類の殻の翼性能の進化に関する研究結果をまとめて国際誌に投稿し,受理された。 2.加瀬および速水は,平成2年10月に沖縄伊江島の海底洞窟に生息する軟体動物群の調査を行った。この動物群は多くが新種で,“生きている化石"とみられる属,従来深海にしか知られていなかった属,著しい幼形進化を示す種を数多く含み,驚くべき内容をもつ。その分類および進化学的意義を共同で考究しつつある。 3.速水は上記の洞窟の資料も含めて,西太平洋地域の現生および化石ワタゾコツキヒガイ科の自然史について総合的研究を進めつつある。 4.速水および大路は本研究に関連して,平成2年11ー12月の海洋研究所淡青丸の90ー17航海で,紀伊半島東部沖で底生生物の生態調査と採集を行った。 5.棚部は,シラスナガイ科などの二枚貝の初期発生と幼生生態を研究して結果を公表するとともに,ジユラ紀前期の酸欠事変を暗示する動物群と層相,および白亜紀アンモナイトのサブプリオノサイクルスの変異と進化様式をそれぞれ国際学会で発表した。 6.阿部は介形虫の行動様式(特に交尾行動)をVTRを使用して観察し,付属肢の機能形態学的研究を行った。 7.大路は,日本産の中新世ウミユリ化石を記載して生物地理学的意義を考察するとともに,現生ウミユリのトリノアシを長期にわたって飼育して,生態・機能・自切・再生能力などについて多くの新知見を得た。
|