研究概要 |
深海・半深海および隠生的環境に生息する有殻無脊椎動物の分布・機能形態・生態・行動などを調査し,以下の成果を得た。 1.速水・加瀬は8月に琉球の海底洞窟の軟体動物群の調査を行ない,その多様性と隠生動物群としての特性を明らかにした。その概要は6月に日本古生物学会例会,7月に米国で行われた国際二枚貝シンポジウムで発表したほか,新たに得られた特異なカキが白亜紀に栄えたピクノドンテ属の遺存種であることをつきとめ,知見をまとめて投稿した。 2.両名は海底洞窟の軟体動物群に共通する形態・発生上の特徴(幼形進化と巨大な第1原殻から推定されるKー戰略)を解析し,その要因を考察した(近く概要をまとめて投稿する予定。) 3.速水は,先に行った流体力学実験にもどづいた遊泳性二枚貝(ツキヒガイ類)の翼性能を高める方向の形態進化に関する論文を公表した。 4.棚部は在米中にゴニアタイト類の初期発生に関する研究を行ない,本年1月の日本古生物学会で発表した。また,ジュラ紀の酸欠環境の動物群に関する論文を公表し,白亜紀アンモナイトのサブプリオノサイクルスと現生オウムガイについても研究結果をまとめて投稿中である。 5.阿部はビデオ観察による貝形虫の交尾行動に関する知見をまとめて公表したほか,ウミホタル類についても観察を行った。 6.大路は,現生ウミユリを長期にわたって飼育し,その生熊・機能形態・自切・再生に関して多くの新知見を得た。 これらの研究は相互の協力のもとに行なわれ,いずれも古生物の理解を高める上に有用な知見となる。特に初期発生と行動生態の研究の重要性が認識された。
|