研究概要 |
深海・半深海および隠生的環境に生息する有殻(化石に残る)無脊椎動物(二枚貝類・腹足類・頭足類・貝形虫・ウミユリ)形態・生態を互いに協力して比較生物学的に研究し,多くの新知見が得られた(論文22篇・口頭発表20)。 速水・加瀬は琉球列島の伊江島・下地島の海底洞窟に研究目的に沿う軟体動物資料が豊富に存在することをつきとめ,ダイバ-の協力を得てその多様性と特性を明らかにした。この動物群は“生きている化石"とみられるアマガイモドキやピクノドンテのほか,驚くほど深海の動物群に類似する多数の属種を含む。また,幼形進化やK戦略(巨大な第1原殻から推定できる)を示す種の割合が非常に多く,これらの要因について進化生態学的考察を進めている。この知見は,単に局地的な動物群の多様性の解明にとどまらず,進化生物学の普遍的な理論やモデルを検証する上に重要な手がかりを与えるものである。 そのほか,速水はツキヒガイなどの遊泳性二枚貝の殻の機能を理解するために,工学部の船型水槽を使って流体力学実験を行い,翼としての機能を高める方向に進化が起こっていることを確かめて公表した。棚部はシラスナガイ科の二枚貝の初期発生と幼生生態について研究結果を公表し,アンモナイト類の初期発生を検討し,多くの新知見を得た。阿部は貝形虫の行動様式(特に交尾行動)をVTRを使用して観察し,付属肢の機能形態を明らかにするなど,行動生態学の古生物学への導入を目ざす研究を行った。大路は中新世ウミユリ類を記載して生物地理的検討を加えたほか,現生ウミユリを飼育し,生態・機能形態について多くの新知見を得た。
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