最終年度である本年は、昨年までに完成した回転粘度計を使用して、常温常圧下における液体と固体粒子との2相混合流体の粘性測定を開始した。液体中に固体が分散している場合の粘性変化についての考察を行なうためである。使用した物質はグリセリンと有機高分子製の球状固体粒子である。測定中に粒子がロ-タ-周辺に偏在したりして、まだ充分満足する結果がでていないが、少なくとも固体粒子量が1vol.%以下の稀薄な状態はEinsteinーRoscoeの式に従って、固体粒子増加とともに粘度が増加することが確認されつつある。 一方、従来からの方法による珪酸塩融体の物性測定は透輝石ー曹長石系融体に対して、主としてなされ、デ-タ-が整えられた。その結果、透輝石40曹長石60付近を境にした異常ー粘性とガラス転移温度にミニマムが現われるーはますます確からしくなった。このようなミニマムは端成分液体の混合による効果であることは明かであり、従って、混合に伴うエントロピ-の変化によって異常は説明できると考えた。具体的には、2液の混合融体において、ある組成の混合液の物性(粘性、ガラス転移温度)の温度・組成依存性は配置エントロピ-によつて記述され、加成性からのずれの量は混合エントロピ-に密接に関係することを明かにした。このことを利用して、透輝石ー灰長石ー曹長石三成分系融体の粘性、ガラス転移温度を計算によって求めた。現在、その計算結果が実測値とあうかどうか、測定を行なっている段階である。 高温高圧下における物性測定としては、透輝石ー曹長石系融体の密度測定とガラス転移温度測定をほぼ完了している。本年度は透輝石20曹長石80融体の測定を行なった。この組成は密度が極めて小さく、逆に、粘性が大きいため成功は2例のみであった。今までに完了した透輝石に富む組成の融体と比較すると、明かに、曹長石成分が増すに従って圧縮率は増大する。このことは、融体構造が隙間の多い3次元網目構造になることに対応している。
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