現世の火山活動に対する理解のみならず、創世期地球における成層構造の発達過程を理解するには、マグマ=珪酸塩融体の物性に関する知識を欠くことはできない。そのため、私達は簡単な2成分系珪酸塩融体の粘性、密度、圧縮率、熱膨張率、ガラス転移温度などの物性測定を行なった。パラメ-タ-としては組成、温度と圧力であり、温度は室温〜1800℃、圧力は常圧〜20kbの広い範囲をカバ-した。 期間中に実際に測定し終えたのは以下のような事項である。 a.1気圧下における透輝石ー灰長石系融体の表面張力、密度、粘性、熱膨張率、ガラス転移温度 b.高温高圧下における透輝石ー灰長石系融体の密度、粘性、ガラス転移温度、圧縮率 c.1気圧下における透輝石ー曹長石系融体の密度、粘性、熱膨張率、ガラス転移温度 d.高温高圧下における透輝石ー曹長石系融体の密度、圧縮率、ガラス転移温度 e.常圧〜高圧・高温からクエンチして作成した上記組成ガラスの赤外線吸収スペクトル 上記の測定などから、理解されたことの内、最も重要な点は次のとうりである。2種類の珪酸塩融体を混合させた場合、混合融体の示す物性値には密度はもとより、粘性、ガラス転移温度においても加成律(端成分融体からの部分的寄与の和によって与えられる)は成立しない。このことは混合にともなう混合エントロピ-の増大によって定量的に説明することが可能である。また、粘性と温度との関係は基本的に配置エントロピ-理論によって定量的に記述されることも示された。従って、端成分珪酸塩融体の物性値が存在し、適当な混合モデルさえ導くことができるなら、混合融体の物性値は計算によって予見することができる。
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