1.種々の非晶質シリコン膜の加熱による構造緩和過程の測定 イオン注入、高真空分子線堆積、気相化学反応堆積法により作った非晶質膜に、種々の熱処理を加え、ラマン散乱スペクトルを測定し、そのTOフォノンピ-クの半値半幅から原子間結合角の変化を測定して構造緩和現象の目安とした。その結果、 (a)構造緩和は熱処理温度に依存し、熱処理後の準平衡値までの変化は熱処理温度の高い方が早いが、平衡値自体は不純物を含まぬ非晶質Siの場合、ラマンスペクトルのTOフォノンピ-ク位置及びその半値半幅から見る限り試料による差は小さい。原子結合角結晶値(109゚)からの偏差は、初期値の〜11゚から、500〜580℃アニ-ル後の準平衡状態では、7〜8゚に減少した。 (b)不純物を含まぬ非晶質Siの構造緩和の進行は、室温イオン注入で作った試料が最も早く、次いで低温イオン注入、高真空中の堆積法で作った試料の順に緩やかになった。 (c)Geを高濃度に注入して作った非晶質Siでは、熱処理によるTOピ-クの移動は不純物を含まぬ場合とは逆向きに起こり、原子結合角も増大する傾向を示した。 2.Siイオン注入による単結晶Si基板表面層の非晶質化過程の検討 Si^+イオン注入時の基板温度を23〜ー200℃の範囲で変えて作った非晶質Si試料、及び室温中でド-ズ量を1E14〜1E15cm^<ー2>と変化して作った試料について、原子結合角の偏差を測定した。その結果、ド-ズ量を増加すると結合角偏差は〜6゚から〜11゚に増加し、また基板温度が低い程偏差角が大きく、これは非晶質層はその製作法により非晶質状態に差があることを示している。 3.計算機シミュレ-ション シリコン単結晶の中に空格子点を導入したモデルをつくり、シミュレ-ションにより構造緩和の過程を調べた。原子間力として Tersoff Potential を用い、216個のSi原子の中に16個の空格子点を導入したモデルを用い、空格子点がdivacancy及びquadravacancyを形成した場合の原子間結合角度の分布、動径分布関数を算出し、上記実験事実の解釈を試みたた。 4.フォノン状態密度の計算 不規則系の電子状態計算法として、Haydock等により考案されたリカ-ジョン法を応用したシリコンのフォノン状態密度を計算するプログラムを開発した。この結果を用いてラマン散乱スペクトルから非晶質の構造に関する知見を得る方法を検討した。
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