研究課題/領域番号 |
01460075
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
丸野 重雄 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (60024204)
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研究分担者 |
川口 健 名古屋工業大学, 工学部, 助手 (80144195)
土井 彰 名古屋工業大学, 工学部, 助教授 (30024326)
増井 寛二 名古屋工業大学, 工学部, 助教授 (10024358)
佐治 学 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (50024211)
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キーワード | 光析出現象 / 光ド-ピング現象 / 超イオン伝導 / 電子線析出現象 / カルコゲナイドガラス / 非晶質薄膜 |
研究概要 |
平成2年度は、前年度に行われた多量の銀を含むGeーSーAg系薄膜の物性と構造の研究をさらに押し進めるとともに、光メモリ-素子としての種々の特性および問題点について調べた。主な結果はつぎの如くである。(1)(Ge_<0.3>S_<0.7>)_<100ーx>Ag_x系薄膜(0≦x≦67)のFTーIR透過スペクトルとX線散漫散乱を測定し、x=40以上で膜構造はAg_<poor>相(Ag_8GeS_6結晶に類似な構造)とAg_<rich>相(多量の銀を含むGeS骨格構造)の2相に分離し、x=60以上になるとAg_<rich>相から銀が析出することがわかった。x=65以上ではAg_<rich>相の増加に対応して析出銀量は急激に増える。(2)SをSeに置き換えた(Ge_<0.3>Se_<0.7>)_<100ーx>Ag_x系薄膜(0≦x≦50)を作製し、この系ではx=30で2相に分離し、x=40以上になると光析出現象が生ずることを明かにした。S系とSe系で光析出臨界銀濃度が異なるのは、これら原子の銀に対するアフィニティ-及び非晶質形成能の違いによるものと考えられる。(2)PSD膜(顕著な光析出現象を示す膜)は電子線照射により銀イオンの移動による著しい構造変化を示す。基板ガラスの有無によって、薄膜中の銀イオンの拡散・析出挙動が異なり、電子線の照射条件(加速電圧、ビ-ム電流等)によって金属銀の析出が見られ、優れた分解能を有する画像形成が可能であることがわかった。(3)PSD膜の耐アルカリ・耐酸性はよく、また析出銀粒子は適当な酸性溶液でエッチング可能であること、逆に電子線照射による銀イオンの拡散消失部分はアルカリ溶液に対する溶解度が大きいことがわかった。この化学的性質から前者ではpositive後者ではnegativeのパタ-ン形成ができ、無機ホトレジストへの応用が十分可能であるとの評価を得た。(4)PSD膜の交流イオン伝導の測定を行い、インピ-ダンスおよびアドミッタンス・プロットからPSD膜は超イオン導電体であることを確認した。また光を照射すると照射面近傍の銀イオン濃度が増加することがわかり、光析出現象における銀イオンの挙動について基礎的知見が得られた。(5)(Ge_<0.3>S_<0.7>)_<100ーx>Ag_x系薄膜のESCAによる実験では、x=42付近を境に非晶質状態における銀の結合配位が異なり、非晶質膜のキャラクタリゼ-ションとPSD機構との関係を化学構造論的に説明し得る知見が得られた。
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