研究概要 |
本年度は,まず,昨年度にひき続き1点曲げ試験による衝撃破壊靭性計測システムを用いて,200℃までの温度下でアルミナ/アルミニウム合金複合材料の衝撃破壊靭性K_<1d>を正確に測定した.この種の材料は延性に富んでいるので,ブリッジインデンテイション法が適用できないため試験片に疲労予き裂を導入し,複数試験片法によってき裂進展開始を検出した.静的破壊力学において用いられてきた塑性域補正の考え方を動的な場合に拡張してき裂先端近傍の塑性域の影響を考慮に入れてK_<1d>を求めた.この複合材料の破壊靭性の温度および負荷速度依存性を明かにし,これらをクリ-プ変形特性を考慮に入れることにより説明した. つぎに,衝撃速度が速く,破壊までの時間が数μs以下の場合の鋼の衝撃破壊じん性K_<Id>測定(応答の速いセンサ-が必要とされるので,通常光を利用したコ-スティックス法が用いられる)のシミュレ-ションを有限要素法により行なった.き裂面にステップ荷重またはランプ荷重が作用する場合を考え,き裂先端近傍の動的応力状態を有限要素法により詳細に解析し,動的応力拡大係数K(t)の支配領域の時間的変化を明確にし,コ-スティックス法に潜在している誤差を明らかにした.コ-スティックス法によって測定される衝撃破壊じん性の値は,破壊までの時間が短くなるほど過大に見積もられること,入力波形に依存することなどを明かにし,現在の計測法によるK_<Id>を用いる限り動的線形破壊力学の基礎式K(t)=K_<Id>の適用に限界のあることを示した.これまでに国の内外で発表されている動的破壊じん性の異常挙動は多くの原因が重畳して生じていると考えられるが,本研究によりその原因のうちいくつかを明らかにすることができた.
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