研究概要 |
1.乱流はさまざまな強さおよび空間的な大きさをもつ渦の変形と相互作用の結果であると考えた。等方性乱流は慣性領域においてKolmogorovのー5/3乗スペクトルを示すことが知られている.3次元離散渦法を用いて4〜8正多面体の表面上に配置された円形渦輪の相互干渉を計算し,-5/3乗スペクトルが実現されることを確認した。エネルギ-散逸は非粘性流体を対象とする本計算には含まれていないが,渦輪の核半径に相対する構造関数を導入しているために,擬似的な高波数領域でのエネルギ-減衰が生ずる.この結果,Kolmogorovの長さスケ-ルを求めることが可能であった.また,エネルギ-スペクトルの低波数領域における極大値に対応する波数の逆数として,エネルギ-を含む渦のスケ-ルを求めることもできた.この計算からえられた重要な知見の一つは,-5/3乗スペクトルを得るためには,多数の渦管の相互作用は必ずしも必要ではなく,数個の渦の相互作用で十分であることである.この結果は,等方性乱流を考える上で新しい概念を導く可能性をもっている. 2.平行部と半田部から構成される擬似楕円渦輪の変形に関する3次元離散渦法による数値解析を行った.渦輪の断面を25個の渦要素の分布によって近似し,さらに周方向にこのような断面を多数配置した.渦輪のアスペクト比ARを4〜12の範囲で変化させたところ,軸の転換;軸の転換後2個の渦輪に分裂;軸の転換なしに2個の渦輪に分裂し,そのあとさらに合体と軸の転換をくり返す;3個の渦輪に分裂したあと再結合と軸の転換を行う,の四つの変形モ-ドがあることがわかった.この結果は非円形ノズルからの噴流の挙動を調べる上で有用な知識を与える。 3.主流中に迎角をもっておかれた円板からの非定常到離流れを渦法によって計算し,後流の中の渦輪がしだいに3次元構造に移行する過程を明らかにした.これによって,後流中にスパイラル構造が示唆された.
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