研究概要 |
本年度は,プラズマCVDでの反応制御を目的とした極短高電圧DCパルス放電の、放電開始および放電維持機構、プラズマ構造に重点を置いた研究を行い、次のような数多くの興味深い新しい知見を得た。 1.一般のDC放電では実現が不可能な数kVに及ぶ高電圧印加に対しても、極短パルス放電(パルス幅:数十〜数百ns)により、きわめて均一で安定なプロセシング用プラズマを形成することができた。 2.極短パルスプラズマの安定生成条件とそのメカニズムを明らかにした。パルス幅が電流立上りの時間遅れより短くなると放電が維持できず、また、パルス幅が長くなり約1μs以上となると直ちにア-ク放電へ移行してしまい、プロセシングには不適なプラズマとなってしまう。 3.極短パルス放電における、電圧一電流特性、電圧立上りに対する電流立上りの遅れ時間を系統的に測定し、これらに及ぼす圧力やパルス幅の影響を明らかにした。 4.陽極と陰極との間のラジカル種(CH,Hα)の発光分布を測定し、通常のDC放電の場合との差異を明らかにした。極短パルス放電の場合、瞬間発光強度は通常のDCの場合の1000倍以上であり、また、発光の強い領域が通常のDCの陰極近傍とは異り陽極側へ拡がり、特に高エネルギ-注入の場合には、陽極近傍での発光が卓越する状況が実現する。 5.理論解析により、上記4の発光領域の遷移は、陰極上での二次電子放出に係わる有効ガンマ係数の増大に起因していることを解明した。 6.以上の成果より、本プラズマ発生手法は、それ自体で、あるいは他のプラズマ(CD,RFなど)と組み合わせることにより、プラズマCVDにおけるラジカル反応制御や、ラジカルとイオンの寄与分離などにおいて、優れた特徴を有していることを示すことができた。
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