研究概要 |
電界、電流が金属の蒸着機構に及ぼす影響を明らかにすること目的とし、基板表面に平行な外部電界を付加することが可能となるように現有の真空蒸着実験装置を改良した。蒸発材料としてマンガン(Mn)および銀(Ag),基板には(100)Siウェハ-、ガラス、マイカ、(100)MaCl単結晶を用いて真空蒸着実験を行い、以下の結果が得られた。 1.ガラス基板を用いてマンガンの真空蒸着実験を行った。蒸着中のYAGレ-ザ-を照射することにより、薄膜結晶構造を局所的に制御することを試みた。実験後の観察では、レ-ザ-照射の影響と思われる局所的な膜厚の減少が観察されたが、結晶構造の変化は観察されなかった。 2.膜厚10nm程度の金属薄膜においてすでにバルク金属とほぼ同じ赤外分光特性を有することがわかった。 3.ガラス基板表面上に電極を作製し、マンガンの真空蒸着実験を行った。蒸着膜が薄く不連続膜の間は、基板表面に平行に電界(直流約5V/cm)を付加したことになり、膜が厚くなり連続膜が得られると薄膜中を電流(0.1A以下)が流れた。しかし、これらの効果による蒸着膜の顕著な変化は見られなかった。 4.大気中でへき開した(100)NaCl単結晶を基板とし、この基板に平行な外部電界(約150V/cm)を付加した状態でAgの真空蒸着実験を行った。膜厚約100μの不連続膜を得たが、電界による薄膜構造の変化は観察されなかった。これは、本実験では蒸発源としてクヌ-ドセンセルを用いたため、金属蒸気中にはイオンがほとんど含まれていなかったことが原因と考えられる。一方、約100μの不連続膜においては、へき開により形成された(100)NaCl単結晶表面のステップに沿って、規則的な島状構造が観察されたが、200μの不連続膜においては島の合体により、大きく不規則的な島状構造のみが観察された。
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