本研究では、CFCに代る新しい作動媒体としての各種水溶液に注目し、その熱力学性質測定を高精度で実施するため、本年度は測定装置の性能試験を行った。また、比較的実測値の豊富なアンモニア水溶液に対して、従来提案されている各種状態式・混合則の比較検討を行った。 水溶液の各種熱力学性質を測定する装置に関しては、配管等を圧力計と接続するなど測定装置を計測機器と接続し、各種の測定を可能とした後、各種の性能試験を実施した。この試験結果により目標の性能が達成できていない部分についは必要な改良を行い、(1)350Kまでの範囲において±1mKの変動幅で温度制御を可能とした、(2)ベロ-ズ変位量を±1.5μmの精度で測定することを可能とした、(3)ベロ-ズ内外の圧力差の検定を行い、その再現性が±0.5kPaであること、温度および変位に対する依存性はあるが、圧力依存性は無視し得ることなど所定の性能および精度が実現できることを確認した。このことにより、次年度においてトリフルオロエタノ-ル溶液のPVTX性質、気液平衡性質、臨界定数、各種微分量、過剰量などの測定が可能となった。 アンモニア水溶液の熱物性値に関しては、文献検索を実施し、既に作成ずみであるデ-タベ-スを補充・整備した。このデ-タベ-スを利用して、従来提案されている状態式・混合則について、実測値との比較、各種状態式間の比較等を詳細に実施した。その結果、気液平衡の実測値は比較的多いものの、PVTX性質、エンタルピ-などの実測値はほとんどないことが明らかとなった。各種状態式・混合則については、気液平衡の計算には十分であるが、エンタルピ-組成線図の作成については十分な精度が得られていないことが明らかとなった。今後、気液平衡のみならずエンタルピ-およびPVTX性質の計算に対して十分な精度をもつ状態式・混合則の開発の必要性を指摘することができた。
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