本年度は、前年度の基礎的な成果に立脚し、カ-ボンド-プ・メタリックp形ガリウムひ素(GaAs)およびInGaAsの形成と詳細な結晶性、電気的特性の評価を行なった。さらにメタリックp形GaAsを用いたメタリックベ-ス・バイポ-ラトランジスタの試作に成功した。 有機金属分子線エピキタシ-(MOMBE)法において、トリメチルガリウムと固体ひ素を用いると、カ-ボンを10^<21>cm^<-3>という超高濃度までド-ピングした超低抵抗メタリックp形GaAs層が形成でき、このメタリック層をヘテロ接合バイポ-ラトランジスタ(HBT)のベ-スに用いることで、HBTの超高速化が期待できる。しかし、超高濃度ド-ピングに伴い、結晶の格子定数が縮少するため、膜中に格子不整合に起因する様々な欠陥が生じる可能性がある。そこで透過型電子顕微鏡を用いて成長膜の転位を評価したところ、膜中に貫通転位は認められず、成長膜と基板の界面にのみ多数のミスフィット転位が存在することが明らかになった。また正孔濃度5x10^<20>cm^<-3>のメタリックp形GaAs中の小数キャリアの拡散長を測定し、0.25μmという良好な結果が得られた。さらには、超高濃度ド-ピングに伴うバンドギャプの縮小について実験的、理論的に検討し、正孔濃度1x10^<20>cm^<-3>で100meV、5x10^<20>cm^<-3>においては200meVに達することを明らかにした。次にこの現象を積極的に活用して、エミッタ、ベ-スともGaAsからなるpseudoーHBTを提案し、その試作を行なった。pseudoーHBTではベ-ス層の超高濃度ド-ピングによるバンドギャップ縮小のため、従来形のHBTと同様、高いエミッタ注入効率、良好な高周波特性が期待できる。現在まで初期段階ながら、ベ-ス幅100nm、正孔濃度1x10^<20>cm^<-3>のpseudoーHBTでトランジスタ動作を確認し、直流電流利得1.7を得ている。
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