本研究では、電子集積回路材料として不動の地位にあるにも拘らず、光デバイスおよび光電子集積回路(OEIC)の応用は非常に困難であるSi結晶基板上に、Siとの格子定数差が小さく、Si基板上にエピタキシアル成長可能な材料である弗化物(CaF_aおよびSrF_2)とSiの超微細周期構造を試作すると共に、そのバンド構造を解明するための理論的基礎を明らかにし、弗化物(CaF_2およびSrF_2)/Si超微細周期構造の光デバイス応用のための基礎的知見を得ることを目的として行ったものであり、初年度は以下に述べる成果を得た。 イオン化クラスタ-ビ-ムエピタキシアル成長(ICBE)法を用いて、Si基板上にCaF_2を成長し、その結晶性および絶縁破壊電界の結晶成長条件依存性を評価した結果、分子線エピタキシ-(MBE)法では結晶化しない低基板温度下においても、厚さ10nm程度の薄層までは適当なイオン化加速により結晶化すること、及びその絶縁破壊電界はイオン化電流と共に増大し10^6V/mの良好な値を得た。 次に、CaF_2/Si微細周期構造の光学的特性の理論的基礎を固めることを目的として、CaF_2ホタル石結晶のバンド構造をLCAO法を用いて求めると共に、このCaF_2のバンド構造と既知のSiバンド構造を基に、CaF_2/Si超格子構造のバンド構造を強結合法により解析する方法を開発した。この解析の結果、(111)面Si基板上に成長したCaF_2/Si超格子構造では、CaF_2層が3層以上の場合には、異なるSi層中の電子は超格子方向には結合することなく、超格子に垂直な面内方向においてバルクSi結晶と同等の性質を示すことが理論的に明らかとなった。
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