本研究は、電子集積回路材料として不動の地位にあるにもかかわらず、光電子集積回路(OEIC)への応用は非常に困難であると考えられるSi単結晶基板上に、弗化物(CaF_2)及びSiを用いた単結晶極微細周期構造を形成し、そのエネルギ-バンド構造を理論的に解明するとともに、光デバイス応用への基礎的知見を得る事を目的としている。初年度に引き続き研究を行い、本年度は以下に述べる成果を得た。 前年度までに、イオン化クラスタ-ビ-ムエピタキシャル成長(ICBE)法を用いて、Si(111)基板上にCaF_2を形成する技術を確立していたので、本年度はCaF_2及びSiの積層エピタルシャル成長を行った。CaF_2よりも大きな表面エネルギ-を有するSiが、CaF_2表面上で凝集してしまう問題を、成長基板温度の低温化(〈600℃)とSiのイオン化加速(Va=2kV)で克服し、CaF_25nm/Si5nm極薄膜100層50周期構造を実現した。高速反射電子線回析(RHEED)によるその場観察の結果、結晶性は単結晶である事がわかり、また、表面SEM観察より、良好な平坦性を保っている事が明らかになった。 次に、CaF_2/Si微細周期構造の光学的特性の理論的基礎を固める事を目的として、CaF_2/Si超格子のエネルギ-バンド構造を理論解析する方法を開発した。基本原理に強結合法を用い、CaF_2及びSiバルクのバンド構造の計算結果を参考に超格子構造の解析を行った結果、(100)面Si上に形成した超格子の場合、光学的特性は基本的にSiの特性と類似になるが、Si層の層厚を減少させるにつれ、より値接遷移型に近づく傾向を見せる事が明らかになった。また、CaF_2の大きなエネルギ-障壁に起因する電子の閉じ込め効果により超格子方向に顕著な量子化が起こる事が示された。
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