研究概要 |
1.人工超格子膜の構造と磁気的性質 スパッタ法により作成したCo/貴金属(Pt,Pd)系多層膜について、膜の結晶構造、周期性、界面での拡散等の評価をX線回析により行い、磁気的性質と多層構造との関連を調べた。磁気特性、特に磁気異方性については、構造との相関が認められ、磁気ひずみが異方性に対して重要な寄与をしていると考えられるが、その詳細については検討中である。 2.人工超格子膜の熱処理による構造緩和と磁気特性の変化 光磁気記録媒体として応用する場合には、熱磁気記録を行うため、熱的安定性が重要な条件となる。そこで、Co/Pd,Co/Pt多層膜について熱処理を行い、温度、時間等の条件に対する多層構造の変化をX線回析により測定した。また、各熱処理条件に対する磁化、磁気異方性の変化により測定した。また、各熱処理条件に対する磁化、磁気異方性の変化を測定し、多層膜の構造緩和と磁気特性との相関について調べた。多層構造は400℃まで安定であるが、更に昇温すると構造が乱れてくる。この熱処理においては、磁化の変化や磁気異方性の低下も同様に生じるので、これらの膜の垂直磁気異方性は、多層構造に由来しているとする考えの証左となった。 3.下地層を設けた人工超格子膜の結晶性、垂直磁気異方性の改善 基板上に下地層を設け、その上にCo/Pd,Co/Pt多層膜を形成した場合、垂直磁気異方性や保磁力が改善されることを、本研究で見出した。下地層としては、PdおよびPtを用いた場合に、X線回析の結果から、多層膜の配向性、結晶性が向上していることが見出され、下地層が多層構造の形成を助け、垂直磁気異方性を増大させていると結論つけられる。
|