| 研究概要 |
Co/貴金属(Pd,Pt)人工格子は、その垂直磁気異方性と短波長での大きな磁気光学効果により、将来の高密度光磁気記録媒体として注目を集めている材料である。本研究では光磁気記録材料としての応用の面から、これら多層膜の垂直磁気異方性と磁気光学効果について多層構造との関係を明らかにした。PdーCo系の多層膜に於て、PdCo/NM(NM=Au,Cu,Pt,Pd)ではPdCo層に由来する体積的な磁気異方性が、またPd/Coでは界面磁気異方性が、垂直磁気異方性を担うことを見いだした。これは格子ミスフィットに基づく多層膜内でのひずみに由来する磁気ひずみの効果から説明することができた。Pt/Co系多層膜では、磁気ひずみ定数が小さく、ひずみの寄与による垂直磁気異方性の発生は見いだされなかった。これらのことから、Pd/Coでは磁気ひずみが、またPt/Coでは結晶磁気異方性が、それぞれの垂直磁気異方性に大きく寄与していることが結論づけられた。垂直磁気異方性は膜の結晶配向性と密接な関係を持ち、下地層を導入することでfcc(111)への結晶配向性を増大させた膜では垂直磁気異方性も増加した。逆に、基板に短結晶MgOを用いfcc(100)配向への誘導を図ったところ、垂直磁気異方性は失われる結果が得られた。
光磁気記録への応用化では、大きなカ-回転角と大きな保磁力とを備えた角形の磁化ル-プを有する膜の形成が必要である。カ-回転ではPt/Coが、保磁力の増大にはPd/Coが有利であることから、両者を複合化したPdPt/Coを作製し、その特性を調べた。Pd/CoにPtを添加していくと、保磁力は低下するがカ-回転角は増加する結果が得られ、Pt組成によってこの2つのパラメ-タが制御できることが確認された。
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