研究概要 |
人工超格子の研究は、半導体の分野においてはレ-ザなど出画期的な成果を上げているが,磁性材料の分野においても基礎的な研究が続けられてきたものの実用的な新材料の発見には至らなかった。ところが最近,Co/PtやCo/Pdなどの超格子膜において大きな垂直磁気異方性と磁気光学効果が発現することが見いだされ,にわかに超格子膜が光磁気材料として注目されるようになった。本研究では,まず高真空蒸着装置やスパッタリング装置を用いて作製したCo/Pd,Co/Pt,Co/Au,Ni/Pd,Ni/Ptなど3d遷移金属と貴金属の超格子膜およびCo/Tb,Co/Gdなど3d遷移金属と希土類元素の超格子膜の多層構造,結晶構造,配向性などをX線回析などにより評価し,磁気異方性や保磁力との相関を求めた。その結果以下の知見を得た。 1.Co/PtやCo/Pdの磁気異方性は,層構造のシャ-プさよりも結晶粒の配向性に依存していることが分かった。さらに配向性を向上させるためには,超格子膜と基板との間にPdやPtの下地層を挿入することが有効であることを見いだした。 2.Co/PdおよびNi/Pd人工格子薄膜の垂直磁気異方性は,CoPd,NiPd合金の大きな磁気歪み定数に起因しており,超格子の界面に存在する合金層がPd層との格子定数の差から歪みを受け磁気歪みの逆効果により垂直磁気異方性が発現していることが分かった。 3.Ndを含んだNdCoなどのアモルファス膜は,大きな磁気光学効果を示すが垂直磁化膜を作製することができなかった。本研究では,超格子構造にすることによって垂直磁気異方性が増大することが見いだされ,良好な磁気及び磁気光学特性を示すNdGd/FeCo人工格子膜を発見した。
|