エピタキシャル成長法を用いて、薄膜SOI構造(Si/Al_2O_3/Si)の形成及び薄膜SOIトランジスタの形成について研究を行った。昨年度は、気相成長法によりSi/Al_2O_3/Siの薄膜SOI構造を作製し、薄膜トランジスタへの応用が可能であることを示した。今年度は、より低温で良質な膜の成長が可能であるガスソ-スMBE法を用いたSi/Al_2O_3/Si構造の形成について研究を行った。 減圧気相成長法により成長したAl_2O_3/Si基板、ガスソ-スMBE法により成長したAl_2O_3/Si基板上に、Si_2H_6を用いたガスソ-スMBE法によりSiのエピタキシャル成長を行った。基板温度750℃で膜厚1000A^^°以上成長を行うと、RHEEDパタ-ンはストリ-クで、2x1の超構造を示した。レプリカ電子顕微鏡写真からも平坦性の良いSi膜がエピタキシャル成長できたことがわかり、気相成長法と比較して、より低温で、結晶性の良好な薄膜SOI構造が形成できた。また、イオンミリング装置により試料を作製し、3層構造の断面を透過電子顕微鏡によって調べたところ、成長界面の乱れや積層欠陥も確認され、さらなる界面制御が必要であることがわかった。しかしながら、ガスソ-スMBE法により、減圧気相成長法の場合に比較して低温で比較的結晶性のよいSi層を形成できることが明かとなり、超薄膜SOIトランジスタを実現できる見通しを得た。また、本研究を進める過程においてサファイヤ基板、Al_2O_3/Si基板上に電子線を照射した後、Siの成長を行うと、電子線照射部にはSiが成長せず、非照射部にのみ選択的にSiがエピタキシャル成長することを発見した。この電子線照射によるSiの選択エピタキシャル成長を用いると、トランジスタ作製時のSiアイランドのエッチングが不要になるなど、微細寸法の薄膜トランジスタを作製する技術として期待できる。
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