3次元集積回路の基本構造であるSOI(Silicon on Insulator)構造として、ヘテロエピタキシャル成長法によるSi/単結晶Al_2O_3/Si(100)構造と形成及びその上への薄膜SOIトランジスタに関して研究を行った。平成元年度は、成長速度の点で有利な気相成長法によるSi/Al_2O_3/Siの薄膜SOI構造について研究を行った。減圧気相成長法によってSi(100)基板上にTMAとN_2Oを用いてAl_3膜の成長を行い、さらにSiH_4を用いた気相成長法によりSi膜をエピタキャル成長させた。この上にMOSトランジスタを作製し、そのトランジスタ動作を確認できた。しかしながら、Si層の膜厚が薄くなると結晶に双晶が含まれるためトランジスタ特性が劣化することがわかった。 平成2年度は、より低温で良質な膜の成長が可能であるガスソ-スMBE法を用いてSi/Al_2O_3/Si構造の形成について研究を行った。まず、減圧気相成長法によって成長したAl_2O_3膜の上にガスソ-スMBE法によりSiの成長を行うための最適な成長条件について検討した。その結果、気相成長法の場合に比較し、より低温で比較的結晶性のよい薄膜SOI層が形成できることが分かった。しかしながら、形成したしたSi/Al_2O_3/Si構造の断面TEM観察を行った結果、ヘテロエピタキシャル成長界面の乱れや、Si層の欠陥もみられた。これを改善し、良好な特性を有する薄膜SOIトランジスタを作製するためにはAl_2O_3膜の成長温度低下やAl_2O_3/Si界面制御などのさらなる検討が必要である。また、このような研究の過程において、電子線照射によるSiの選択エピタキシャル成長が行えることを発見した。これにより微細寸法の薄膜トランジスタ作製が可能となることを明らかにした。
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