研究概要 |
光MOCVD法によりチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti):PZT)薄膜の成長を行ない,成長パラメ-タ-が薄膜成長に及ぼす影響を調べた。新たに多元系光MOCVD装置を開発し,Pb(C_2H_5)_4,Ti(iーOC_3H_7)_4,Zr(tーOC_4H_9)_4及びO_2を原料に,光源にはXeーHgランプを用いPZT膜成長を基板温度450ー500℃において行った。得られた薄膜は光照射の有無によらずアモルファス構造を示した。しかし800℃で3時間アニ-ルする事によりペロブスカイト相のPZTになった。アニ-ル後のPZT膜は多結晶であったが,その結晶系は成膜時のZr/Ti供給比やPb供給量を変化させる事により正方晶系と菱面体晶系とに制御することができた。アニ-ル後のPZT膜の比誘電率は約300,誘電正接は0.002ー0.03であり,DーEヒステリシスカ-ブも得られた。基板温度600℃で成長させると、asーgrownでペロブスカイトの(III)PZT配向膜が得られた。Zr/Ti流量比が小さい場合は正方晶系のものが得られたが,その流量比を大きくしても一般に菱面体晶のPZT単一構造膜を得るのは困難であった。ICP分析法により膜中のPb/(Zr+Ti)比は1.1ー1.3,Zr/(Zr+Ti)比は0.16ー0.28であることがわかった。光照射によりPb量が減少すると同時にZr/Ti比は増加する。また光照射は成長速度の増加をもたらす事もわかった。得られたPZT膜の比誘電率は250ー700程度,誘電正接は0.03ー0.05程度であり,ほとんどの膜はDーEヒステリシスル-プを示した。残留分極値は20ー30μC/cm^2でスパッタ膜とほぼ同程度であるが抗電界はやや大きく100ー120KV/cmであった。またZr/Ti組成比に対する光照射効果に起因するとみられる残留分極値や抗電界の変化も認められた。8Vのダブルパルスによる分極反転電荷密度は10ー20μC/cm^2であった。さらに5V印加時でのリ-ク電流密度は10^<-8>ー10^<-7>A/cm_2程度であった。
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