シリコン系材料は水素プラズマ・スパッタ法により作製したが、本年度はパラメ-タのうち高周波電力及び基板温度に着目し、これらが材料の構造と物性に及ぼす影響を調べた。以下、測定項目ごとの結果と考察を示し、最後にまとめを行う。(1)X線回折測定の結果、室温で高周波電力が大きい場合には、ほとんどの部分が比較的大きな微結晶となっている事が判明した。また、液体窒素温度で作製した材料においても、明確な微結晶の存在が確認出来た。(2)ラマン散乱測定の結果はX線回折の結果と矛盾しない。従って、非晶質または小さな微結晶の場合、480cm^<-1>近傍にピ-クを持つブロ-ドなスペクトルが得られるが、両構造の相違はこれらの測定では区別出来ない。しかし、(1)での結果より、スペクトルの半値幅に影響を及ぼす程度に小さな微結晶となっている事は充分考えられる。(3)赤外吸収測定の結果、雰囲気中の水素はSiH_2またはSiH_3なる結合をして材料中に取り込まれる事が判明した。この結果は前記2個のパラメ-タを変化させた場合(温度:液体窒素ー室温、高周波電力:55ー300W)、すべて同じであった。また、この様な結合をしているものの、ポリシラン合金の吸収波数と若干異なり、高波数側にシフトする事から、一定量のシリコン原子が集合したもの(例えば、微結晶やクラスタ-)に水素が結合していると考えられる。(4)液体窒素温度でかつ低い高周波電力のもとで作製した、ブロ-ドなラマン・スペクトルを示す材料が室温可視発光を呈する事を確認し、それの中心波長が約700nmにある事を明らかにした。この測定は本年度購入の設備備品を用いて行った。以上の結果より、非常に小さな微結晶または非晶質部分が窒温可視発光に関与していると考えられる。来年度は、スパッタ法により室温可視発光する材料が出来るという大きな利点を生かすべく、計画書に沿った研究を予定どおり行う。
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