本研究では、我々のこれまでの市街地多重波伝搬環構造の研究経過を踏まえて、超高速無線LAN構築を目標として屋内多重波伝搬路の特性化、伝送技術及びLANに関する各種要素技術について理論的実験的検討を行い、以下のような研究成果を得た。 1.400MHz帯において屋内における多重波伝搬距離特性とビット誤り率特性を測定し、室内置局設計に有効なデ-タを取得した。また、1.5GHz帯で多重波遅延プロフィ-ル測定を行い、遅延多重波発生の原因を明らかに遅延特性の簡易な推定を行った。 2.PSK変調方式に適用可能なインサ-ビス多重波遅延分散測定法を考案し、その特性を実証するとともに指向性ダイバ-シチ受信の枝選択法への適用を検討した。また、多値変調方式にも拡張を検討し、直交検波出力の絶対値の差を利用する方法が実用的な方法であることが分かった。 3.遅延多重波に対して有効なPSKーRZ方式について市街地、大学構内において128kb/s〜2Mb/sの伝送速度で野外伝送実験を実施し、マイクロセル方式の基本的な伝送特性を明らかにした。 4.フェ-ジング通信路におけるパケット伝送効率を適応的パケット長可変な方式及びハイブリッドARQ誤り制御を行った場合について検討した。 5.無線LANの実現に必要な安価で高速伝送可能な無線送受信機の検討を行い、LSI化可能な経済的な方式を実現できる見通しを得た。 6.遅延時間差が1シンボル長を越える長い遅延波に対して誤り率の改善を可能にするViterbi適応等化器について種々の変調方式に対して検討するとともに、指向性ダイバ-シチ受信と組合わせる新しい尤度合成方式を提案して誤り率の改善効果を高める方式を提案した。
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