本年度は、(1)表面圧力測定、(2)空力弾性応答の測定、(3)流れの可視化による境界層内流体の加速による空力弾性振動の抑制法に関する基礎的研究を行った。正方形角柱の上流上下隅に回転ロ-タ-を取付けることによって、境界層内の流体の加速を行った。これによって、(1)表面圧力がどのように変わるかを、表面に設けた40点の圧力測定孔を用いて測定した。上下の回転軸を同一の速度で回転させると、速度の増加にともなって、側面の圧力分布は、回転させない場合は一様分布であったものが、回転をさせると上流側で負圧が大きく、下流側で圧力が回復するという偏平な断面の圧力分布に近い形となり、回転軸の速度を増すことが構造断面を偏平化させているといえる。側面の圧力回復にともなって、背面圧も回復しており、回転数を増加させることは、抗力の減少を行うことにもなる。(2)自由振動実験を行い、回転軸を回転することによって、空力弾性振動がどのように抑制されるかを検討した。上下の回転軸を同一速度で回転する場合、回転速度を上昇させると、ギャロッピングの発生風速が上昇するが、渦励振の振幅は小さくなるものの完全には抑制されない。これに対して、片側の回転軸のみを回転させると、ある回転数以上からギャロッピングも渦励振も完全に抑制され、本研究の主題であった境界層内流体の加速によって、空力弾性振動の抑制が可能であることが、判明した。さらに、回転軸を回転させたとき、周辺流体がどのような動きをしているかを、(3)流れの可視化方法で確認したが、圧力測定から予測したとおりの結果となっており、本研究の基礎的部分についてかなりの成果を納めることができた。現在は、超長大橋や超々高層ビルの耐風制振という観点で、実用化に向けて更に検討を加えている。
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