研究概要 |
アルカリ骨材反応及び塩害によるコンクリ-トあるいは鉄筋の損傷がコンクリ-ト構造物の耐久性を早期に著しく低下させる原因として注目されている。アルカリ骨材反応及び塩害による損傷発生要因は多岐にわたり,しかもこれらの関連性は複雑となっている。このためアルカリ骨材反応及び塩害による損傷か否か判定及びこれによる損傷を受けたと考えられる構造物の性能評価には,構造物の状況や構造物から得られるデ-タを総合的に判断する必要がある。本研究では,特に,アルカリ骨材反応による損傷か否かの判定法を述べるとともに,現在までに実施されている多数の調査,研究を整理することにより,おもにアルカリシリカ反応(以下,ASR)発生要因の抽出を行い,各要因間の関連性をわかりやすく把握するために,システム工学的手法により階層化することによって,既設構造物に対する目視及び資料調査あるいは各種試験等から得られるデ-タを判断したものを,質問項目に対する回答として入力することにより,ASRによる損傷であるか否かの判定システムを構築した。そして,補修,補強を実施するに当たって必要となる構造物の性能評価について検討したものである。本研究でえられた主な結果をまとめると以下のようである:(1)階層構造モデルとファジィ集合論を組み合わせることによって,技術者のASRに関する経験や知識の蓄積を反映させたASR判定システムの構築が可能となり,これを利用してASRによる損傷発生要因間の関連性を明確にすることができ,どんな経路で損傷が発生したかを知ることができる。(2)本システムでは,「骨材の反応性」及び「ひびわれ進行性」にどの程度異常が生じているかを考慮した定量的判定結果の出力が可能であるため,補修,補強を行う際の有力な指標とすることが出きる。また,既存の判定法と比べて判定項目数が多いため,より細部にわたる判定ができ,実用的といえる。
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