研究概要 |
1)隅田川での水辺空間整備の進展と人口,住宅の増減の経年変化を調査するとともに,その実態調査をおこない,再開発と地域住民とのかかわり方について考察を行った。水辺に面した地域の再開発は,高層ビル,マンション建設が中心で個人住宅の減少が経年的にも進行している。人口の減少した地区はこれに相当しており,再開発はこの地区からの住民の転出の引金となっている。水辺空間の整備と地域住民との関わりは生活のなかでの活性化にはつながっていない。ス-パ-堤防,大川端再開発など,開発が大規模化しているために隅田川の景観は大きく変化し,その後背地ではますます水面から隔離されている。高水敷の利用できる多摩川とは異なり,都市の中での河川との関わりを大事にした開発の方法の新しい秩序作りが必要である。再開発により夜間人口が減少してしまったのでは,歴史の中で醸される都市河川の姿をつくり出すことは出来ない。隅田川の空間をレジャ-などで楽しんでいる人への調査では,0.5〜1時間かけてこの場所にきているケ-スが多く,ス-パ-堤防のフェンスの人工的な美しさは,地域住民の憩いの場ではなく,空間をなくした都市住民全体のものとなりつつある。この新しい枠組みについて,アンケ-ト調査,人工移動の経年変化などから検討を加えた。 2)自然河川の様相を多く残した多摩川での,人工適応度,自然適応度の検討を現地調査を中心にして行い,利用者のアンケ-ト調査の集計を反映して過去のゾ-ニングの検証を行った。多摩川へのアクセス時間は隅田川同様に長くなってきている。緑と空間をなくした都市生活者に取っては,河川空間は自然,スポ-ツ施設,ピクニック,草花などを兼ね備えた最後の空間となっている。地域活性化への水辺空間の整備では,河川沿いだけでなく広い流域ネットワ-クのなかでの役割を明確にする必要がある。
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