建築の各部構法は、それぞれの部分のみに注目して、性能の向上が図られる。しかしそれは、必ずしも建物全体の性能の向上を意味しない。本研究は、まず、これら各部の構法と全体の構法の関係を整理した。特に、各部の構法改良が、建物全体にとって問題となる例を整理分類した。その一つに、意匠性の向上が耐震性を損なう場合がある。昭和30年、40年代に普及した横連窓の開口形式は、インターナショナルな意匠を可能としたが、後の地震では、その時期の建物に開口部の被害が集中していることが明らかになった。このケースを詳細に調査した。 横連窓の開口形式は、特に庁舎建築に多く見られる。そこで、関東地方の庁舎建築、および大手設計事務所の庁舎を中心に、実態調査を実施した。その結果、地震被害の集中した時期の建物は、スチールサッシ、硬化パテの採用という共通した特徴が示された。これらは、横連窓という当時最も現代的であった設計意匠を採用する上で、広く採用された構法であった。しかし、こうした開口の構法は、層間変形追従性に問題があり、後の地震ではガラスの破損を大量に発生させた。その後、アルミで、弾性シーリングを用いた構法へと変化して行くことで、この問題は解決される。こうした経緯を詳述しながら、各部の構法と全体の構法の、両者の関係の望ましいあり方を提示した。
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