研究概要 |
本年度は,研究実施計画の最終年度に当たり,過去3年の間に実施した研究の取りまとめを行った。その概要を裏面を参照しつつ列記する。 ○浮力を伴う乱流モデルの検討 浮力を伴う汚染質の拡散問題について,主にε方程式の浮力生産項のモデルの相違が予測精度に与える影響について検討した。その結果,卓越風向が水平の場合,浮力生産が正の場合には,その影響を無視すると乱流拡散が過大評価されて実験との不一致を招くこと。この点についてViollet型のモデルを使用すれば緩和されることを確認した。更に,拡散方程式の移流項の差分近似式には数値拡散のないもの,計算領域には対称条件を使用せず全領域とした方が予測精度の高いことが判明し,以上の成果を取りまとめ発表した(久保)。 ○差分meshの局所的分割法 差分法を基礎解法として用いる場合,計算分解能の局所的な調整に関する問題が実用問題への応用に当たって障害となるが,この点を解消する対策としてMultiーMesh法をこれまでに開発し,本年度はその成果を取りまとめた。計算法の本質部分の妥当性は,二次元条件を対象として詳細に検討し(倉渕b),一部の改良を行った上で三次元条件に拡張した(倉渕c)。更に従来数値計算法の応用がほとんど行われていない通風時の建物内外気流を対象とした解析を試み,室内と屋外の気流が相互に影響を与える複雑な流れ条件も,新解法を用いれば,かなり容易に数値計算予測の可能なことを検証した(倉渕d)。 ○実大室の空調問題 暖冷房を行う実大居室を対象に,空間温度,壁面温度・熱流に関する実験を行い,新開発の壁面境界条件を用いた場合の計算結果の妥当性について検討した結果を取りまとめた。今回の検討範囲については,壁面温度を規定する境界条件を用いても既往の熱流境界条件と同等の精度の数値予測が可能であり,対流熱伝達率の部位別変化等の有益な情報が予測可能であることを確かめた(倉渕a,武政)。
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