本年度の研究成果は、「住宅ストック集積パタ-ンモデル」を開発したことにある。従来の住宅型別類型は住宅単体別の特性を集合的に表現したものであるので、居住地の実態に合致しない面がある。そこで、本研究では、様々な住宅型の集合を「群」として把握し、それらの混合状態をパタ-ン化する方法を用いた。この方法は、たとえば、公称町レベルの居住地特性の分析において以下のような有効性をもっている。 まず、人口増減率や老年化指数のように単純化された指標でみると住宅ストック集積パタ-ンに対応して特性が見られる場合もあるが、逆に同じパタ-ンであっても共通性を見出すことが困難な場合もある。これは、小さな公称町では誤差が大きく、有意な統計デ-タが得られなかったことと、本来のパタ-ンとは異なる特定の住宅ストックによる影響が無視できないほど大きくなったためである。しかし、地図上での確認や年次別人口ピラミッドなどのより詳細なデ-タと照合することによってその原因が説明でき、その影響を取り除くことによって共通性を見出すことが可能であった(たとえばワンル-ムマンションによる学生の影響などは人口ピラミッドで容易に確認できる)。また、複数のパタ-ンを含む公称町においても同様に各パタ-ンの合成として説明できる場合が多かった。このことから、住宅ストック集積パタ-ン別分析を行なう場合に、各パタ-ンに見られる共通性を代表するものとして、比較的典型的な公称町だけをまとめ、各パタ-ンの人口変動特性に関するデ-タとしての妥当性が示された。 次に、各々の国勢統計区(学区)内での代表的な公称町における人口変動をみると、住宅ストック集積パタ-ンとの間に明らかな対応関係が見られた。さらに、京都市域全体での分布をみると、普遍的なパタ-ンと局地的なパタ-ンとに明確に区別されることがわかった。
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