研究概要 |
1.施設における物品の有り様をとらえるための3つの位相 多くの施設において居室の収納に関する色々な工夫を見出すことができる。その大半は限られたスペ-スを最大限有効に活用する目的のための工夫である。それがいきすぎると、職員の介助を前提としたものも出現する。又施設入所時に持ち込む私物を量だけでなく品目の上でも制限することは珍しくない。基本的な日常生活用品から私的楽しみのための物品にいたるまで、私物の菅理が過度に他律的になる危険性を、どこの施設も潜在的に抱えていると言える。施設における物品の有り様を把えるには実用性・機能性の位相や知覚・心理等の対象としての位相だけでなく、例えばプライバシ-の問題をもその中に包含する社会的・実在的位相をも視野の中に収めておく必要がある。このような物品の有り様に関する視野は、自閉症者特有の現象を説明するに有効なだけでなく、精神薄弱者の障害程度や社会自立度によって異なってくる、物品の扱いについての特微を整理する上でも大変役立つものである。 2.住環境比較ーー居住施設 対 グル-プホ-ムーー 施設型福祉から地域型福祉への変化の潮流は、精神薄弱者福祉界さらに精神薄弱者自身も洗い始めている。本研究もその転換に対応すべく研究の軌道修正を余儀なくされた。グル-プホ-ムでは、一人当りの面積もさほど施設と違わない場合でも、単なる生活の雰囲気の差と感じられる以上の質的違い,生活者の心の安定や発達成熟を促進する効果を認める例が多く聞かれた。この関達を、地域内での生活あるいは小規模集団での生活といった要素との単なる因果関係として把えるのは、単純化が過ぎるだろう。むしろ上述した社会的・実在的位相の中で、地域の中での生活や小規模集団等のもつ意味を分析することで、豊かな成果が期待することができよう。
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