研究概要 |
メカニカルアロイングによるアモルファス相の形成過程を混合のエンタルピ-ΔHmixの大きさと原子寸法比で分類し,系統的に研究を進めた。今年度はΔHmix<0の系としてCuーZr系の低温比熱,ΔHmix>0の系としてCuーTa系の中性子回析,EXAFS,XPS,低温比熱さらにCuーV系の中性子回析による研究を中心に展開させた。得られた主な結果を以下にまとめる。 (1)CuーZr混合粉末をメカニカルアロイングした結果,アモルファス相が生成した。低温比熱を測定した結果,超伝導遷移に伴うシャ-プな比熱のとびが2.5K近傍に出現した。この事実からCuとZrの化学的結合が十分均一に進行したと結論した。 (2)CuーTa混合粉末をメカニカルアロイングした結果,ΔHmix>0にもかかわらずアモルファス相の生成を裏付ける実験事実を中性子回析の構造因子の変化,EXAFSスペクトルさらにXPSによる価電子帯の変化さらには低温比熱の測定によるTaの超伝導の消失から捉えることが出来た。アモルファス化したCu_<30>Ta_<70>試料を800℃において10時間熱処理した後,再び低温比熱を測定したところTaの超伝導が復活し,もとのCuとTaに分解することが確かめられた。このようにΔHmix>0の系にもかかわらず,アモルファス化が確実に進行することを確認することが出来た。 (3)CuーV混合粉末をメカニカルアロイングした結果,ΔHmix>0にもかかわらずアモルファス化が進行することを中性子回析及びX線回析により確かめることが出来た。CuーTa系と異なりVーCu bcc強制固溶体が一部生成することもわかった。これはCuーV平衡状態図においてV側にCuを固溶する範囲がある事実と関連していることが示唆された。
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