研究概要 |
1.直方体共振スペクトルの効率的解析プログラムの開発 弾性定数測定法の一つである直方体共振法は、3mm角程度の小型試験片を用いて測定が可能であるという点で注目を集めている。しかしながら、従来採用されているデ-タ解析法は試行錯誤的であり、解析に長時間を要した。本研究において、等方体および立方晶系結晶に適用しうる、効率的かつ系統的な解析プログラムを完成した。 2.Ni基Ll_2型金属間化合物Ni_3Xの弾性的性質 金属間化合物の典型構造の一つであるLl_2型構造のNi基化合物、Ni_3X(X=Mn,Fe,Al,Si,Ge,Ga)について、直方体共振法により弾性定数、C_<11>,C_<12>,C_<44>を測定した。Ll_2型化合物は、比較的大きな弾性異方性、イオン結合的性質を有することを明らかにした。また、弾性定数は、格子定数が大きいほど小さいという傾向が認められ、構成元素Xは“化学的圧力"によりNi格子を膨張させ、その結果として弾性定数を低下させている、という見方ができることを示した。 3.Ni_3Ge中のNiおよびGeの自己拡散 Ll_2型化合物の一つであるNi_3Geについて、NiとGeの自己拡散係数をトレ-サ-法により測定した。NiはGeの約30倍の速さで拡散すること、拡散係数の試料組成依存性は顕著ではなく、B2型化合物の挙動と対照的であること、などを明らかにした。なお、本研究は、Ll_2型化合物について両構成元素の拡散係数を測定した最初の報告であり、金属間化合物における拡散機構を解明する上で重要なデ-タである。 あわせて、Ni_3Ge中のCoおよびFeの不純物拡散係数を測定し、これらの元素の占有位置について考察した。
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