本研究の主たる初年度計画は、研究目的の遂行のために必要な測定精度が得られるように、現有設備である動的赤外吸収二色性測定システムを改良することであった。赤外線用直線偏光回転装置(光弾性変調器、周波数74kHz)、高速光チョッパ装置(周波数4kHz)、ならびに3台のロックインアンプを購入し、これらを組み合わせた赤外線光学系の改造および光強度測定系のインタ-フェイス電子回路の設計・製作を行うとともに、新しい動的赤外吸収二色性測定システムの測定制御プログラムを開発した。完成した動的赤外吸収二色性測定システムによる予備実験結果から、充分な測定精度で動的赤外吸収二色性測定が可能であることが証明された。また、上述の動的赤外吸収二色性測定システムの改良と平行して、セグメント化ポリウレタンウレアの力学的疲労にともなうハ-ドセグメントのセグメント凝集状態と球晶状高次構造の疲労現象に及ぼす水分子の影響についてFTIRを用いて流動光学的検討を行った。空気中での力学的疲労に比較して、水中での力学的疲労の場合には、ハ-ドセグメントの凝集状態、球晶状高次構造などの各種次元の分子集合状態の破壊が急速に進行することが観察された。しかしながら単純に水中浸漬するだけでは、これらの分子集合状態には変化が見られないことから、各種次元の分子集合状態の破壊現象の促進は力学的疲労と水分子との相乗効果によるものと結論される。 以上の結果をもとにして、セグメント化ポリウレタンウレアのみならずシロキサン含有セグメント化ポリウレタンについても同様な流動光学的解析を行い、医用エラストマ-の高性能化について検討する。
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