本研究は、人工心臓などに使用される医用エラストマ-の力学疲労にともなう微細構造の変化を解明し、長い疲労寿命を有する医用エラストマ-の材料設計並びに材料開発への応用を目的として行われ、以下の成果を得た。 (A)分子量の異なるポリテトラメチレングリコ-ル(PTMG)をソフトセグメントとするセグメント化ポリウレタンウレア(SPUU)について、それらの変形機構に関する静的ならびに動的赤外吸収二色性測定結果から以下の知見が得られた。 (1)ソフトセグメントの正配向性は高温あるいは低周波数で減少を示した。これは、ソフトセグメントマトリックス中での有効な架橋点の数が減少し、ソフトセグメントの架橋点間の有効長が増大することと考えられる。 (2)ソフトセグメントプレポリマ-の分子量が大きくなると、ハ-ドセグメントの負配向性は温度が上昇するに従って減少する。これらの相違はハ-ドセグメント相に於ける凝集力の相違で説明することができる。 (B)抗血栓性の良好な各種のポリジメチルシロキサン(PES)含有セグメント化ポリウレタン(SPU)においては以下の結果が得られた。 (1)延伸によるハ-ドセグメントの負配向がなく、これはハ-ドセグメントドメインの凝集力が低いために、延伸初期段階からハ-ドセグメントが破壊されるためである。 (2)力学および熱的性質はソフトセグメント分子量に依存し、ソフトセグメント分子量が大きくなるに従いミクロ相分離構造が発達していく。 (3)ソフトセグメント中のPES成分はPTMGの結晶性を低下させるが、ハ-ドおよびソフトセグメント間の相分離を促進させる。
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