研究概要 |
1.第三紀層地すべり地のモデル地区としてとりあげた東虫亀地区の地すべり地において,昨年に引き続き,地下水位ー水圧の観測,水質の調査を継続して行った。 2.観測孔内の水質調査(部分有孔観測孔内の水質は変化しないときでも,全長有孔観測孔内の深さ方向の水質分布が変化することなど)と孔内水位の変動の仕方の分析を併用することによって,現地で夛用されている全長有孔観測孔内の水質分布は、必ずしも周囲の土層の水質分布と一致しないこと(孔内の水質は、ポテンシャルの高い土中水の孔内への浸入と,その水質の拡散によって変化する)などの知見を得た。 3.地すべり地の地下水のように、自由水面をもつ不圧地下水の浸透解析法として、地表面までの不飽和流を含む全領域を,透水係数を一定として解析の対象として有限要素法によって解く簡易法を提示することができた。これによって、透水性が異なるゾ-ンから成る実際の斜面断面の浸透流についても、従来の自由水面以下の飽和流のみをFEMで解く方法よりも、はるかに簡単でかつより合理的な解を得ることができた。 4.部分有孔観測孔等による適切な地下水位デ-タとこの方法による数値解と比較することによって,土層別透水係数など水理断面モデルを同定することが容易になった。従って、この水理断面モデルによる浸透流のシミュレ-ションから、実際のスベリ斜面の安定解析において不可欠であるが、従来きちんと求められることが少なかったスベリ面の間隙水圧を数値的に求めることが可能となり、地下上変動による地すべりの発生条件を従来より合理的定量的に扱える方法の提示となったと考えられる。 5.地すべり対策工としての集水井や排水トンネルによる水抜き工の効果をシミュレ-ションによって定量的に解明する試みは、まだ途中の段階であるが,その解析法は,以上に示した方法で可能である見透しを得た。
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