研究概要 |
残留強度はすべり面が形成され,すべり面に沿って粘土粒子の再配列がおきている場合に発揮される強度であり,再活動地すべりや地質・構造的な弱面を潜在すべり面とする初生地すべりの安定解析の検討を行う際に利用される。残留強度パラメ-タ-φ_rの決定には,リングせん断試験機が使用され,大変位でかつ排水条件が必要とされるため,長期間を要する。そのため,地すべりや崩壊の二次災害防止のための緊急な要請に即応できないのが現状である。φ_rは2μm以下粘土分CF,塑性指数I_p,スメクタイト量S_m等の物理的,化学的および鉱物学的性質と関係していることが知られている。これらの関係が明確になれば,比較的短時間に行える分析試験によってφ_rを求め,斜面の安定度を評価できる。 本年度は,初年度の研究を継続発展させ,φ_rと2μm以下粘土分CF,塑性指数I_pおよびスメクタイト量Smの関係に関して,以下の結果を得た。 1)φ_rーCF関係とShear mode区分は,すべり面土と非すべり面土の違いや残留せん断面におけるスリッケンサイド(鏡肌)の形成を推し量るのに有効である。 2)φ_rとI_pとの間には相関性があり,φ_r=35.9・I_<p^<-0.368>>関係式を得た。 3)φ_rはS_mと一次関係があり,φ_r=13.8-0.092・S_m関係式が成り立つ。 4)コロイドー化学活性は粒子の再配列を促しφ_rを低下させる。 したがって,試料の物理的および鉱物学的性質とコロイドの化学活性が明らかになれば,上記関係および関係式を基にして,おおよそのφ_r推定が可能である。
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