地すべり土の大変位せん断挙動についての検討結果によると、(1)残留状態に到達するまでの最小せん変位量は土粒子の性質や垂直応力に依存する。(2)最小せん変位量は泥岩試料で40〜60cm、凝灰質れき質土では200〜300cmとなり大変位である。(3)残留強度測定は、三軸や直接せん断試験では無理であり、リングせん断試験が望ましいが、排水条件を満たす必要があるので、長時間を要する。 残留強度パラメータφrと2μm以下粘土分CF、塑性指数Ipおよびスメクタイト量Smの関係についての検討結果によると、(1)φr-CF関係およびShear mode区分は、すべり面土と非すべり面土の違いや残留せん断面における鏡肌形成を推し量るのに有効である。(2)φrとIpの間にはφr=35.9・Ip^<-0.368>関係式が成り立つ。(3)φr=13.8-0.092・Sm関係式が成り立つ。(4)上記関係および関係式によっておよそそのφr推定が可能である。 提案された安定度評価法は、残留係数、逆算法、実験強度パラメータおよびモール・クーロン式を組み合わせたすべり面の平均強度パラメータ算定式に、残留係数と平均強度の関係を加味し安全率を予測しようとするものである。新潟の地すべりを事例としたせん断強度と安定度評価についての検討結果によると、(1)すべり面の状態は一様ではなく、鏡肌面や脆弱な破砕岩が混在しているので、強度パラメータを明確にする必要がある。(2)破砕泥岩のピーク強度は内在亀裂によって大きく支配される。(3)残留強度はスメクタイト粒子に依存し大幅に低下する。(4)残留係数とすべり面の平均強度の間には一次関係が成立つので、残留係数の推定が可能である。(5)推定残留係数に基づく安定度評価法は、地すべりブロックが多数分布し、その中のいくつかが地すべりを起こしているような地区において、小康を保っている地すべりブロックの危険度を判定する場合に有効である。
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