研究概要 |
放射型の計算機トモグラフィ-(CT)において符号化開口を用いる方法が知られている.この方法は深さ方向の分解能が低いという欠点を有する.本研究では符号化開口CTにおいて,深さ方向の分解能を向上させるために新しい方式を開発することを目的とした.これまで,研究代表者らは,疑似ランダム系列(m系列)を2次元に配列したM配列を符号化開口に用い,その自己相関関数が近似的にデルタ関数になることを利用して,投影デ-タから,マッチトフィルタ法により逆問題を解いて断層像を得る方法を理論的・実験的に開発してきた.本研究では,この符号化開口にM配列を用いる方法の深さ方向の分解能を向上させるため,符号化開口を深さ方向あるいは面内で移動して得られる複数の投影像を用い,アルゴリズムに反復法を導入して再構成像を得る方法を開発した.実際には,計算機シミュレ-ションによる検討の後,可視光を用いた観測系を実地に構成し,簡単な実験を行ってその有効性を確めた. 最初に,M配列符号化開口に対するシミュレ-ションにより,開口あるいは面検出器を深さ方向に移動して2枚の投影を得,その差から3次元分布を再構成する方法を検討した.点放射源の像に基づき分解能の評価を行なった結果,従来の単一投影からの再構成像に比して,深さ方向の分解能が向上することを明らかにした.ただし,予想通り,一種の微分効果が生じることも確かめた.次に,開口をその面内で移動し,両眼視に相当する投影像を得て再構成し,やはり単一投影からの再構成像に比して分解能が向上することを確めた.このとき,複数投影の導入と同時に,再構成アルゴリズムに反復法を導入することにより分解能が向上することを明らかとした.これは,観測された投影から,放射源分布を再構成し,それをもう一度投影して投影デ-タを得,これと観測デ-タができるだけ近くなるように反復計算するものである.
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