研究概要 |
“誘導電圧重畳"は,複数のパルスを強磁性体コアを用いて重畳することによって高電圧を得る新しい方式のパルス電力技術である。本研究で開発した誘導電圧重畳装置“VIVAーI"は、定格出力4MV,パルス幅60nsであり,高電圧化に重要な平均電位傾度において2.5MV/mという世界最高値の達成を目指している。平成元年度には,本装置の設計・製作を行い,定格の40%の条件で各部の基本動作特性が評価された。平成2年度は,平成元年度の結果をもとに,a)装置の定格動作及びb)電子ビ-ムの品質(エネルギ-広がりの低減)の向上のためのPFLの波形整形性向上,を目的とした装置の改良を実施した。 装置の定格動作を実現するためには,定格動作時(各セルに3個のコアを挿入して2MV/セルの電圧を印加)の誘導セルの内部電界を絶縁破壊電界以下にする必要がある。そこで,セル内の電界分布を評価した結果、定格動作においてコアの上端部で破壊電界を越える電界が発生することがわかり、コアの形状の改善((1)電界緩和リングを設置,(2)フランジの材質をベ-クライトからポリプロピレンに変更)を実施した。その結果,絶縁破壊に対する安全係数は1以下から〜3に引き上げられた。また,計算機シミュレ-ション及び実験に基づくPFLの動作パラメ-タの評価及びその最適化を実施した。 以上の研究により,本装置の定格動作による運転において2.5MV/mの電位傾度実現の為の環境が整えられた。波形整形性の改善に関しては,PFLの充電に可飽和インダクタ-を用いた新しい方式を考案し,定格の40%の条件で動作確認を行った結果,波形整形性の大幅な改善が確認された。現在,定格動作に向けての充電電圧の向上とビ-ム品質の評価実験を実施中である。
|