研究概要 |
今年度は,星尾ブックシェルフの協力によって,欧米の古書の収集の範囲が増したので,これまで収集困難と思われていた物理学の概説書・啓蒙書等の調査・入手も実現するようになった。今年度に入手できた書物の中でとくに重要なものには,A.ウォ-カ-の『易しい理学の体系十二講』全2冊(1802),R.ワトソンの『化学論』全5冊(1781ー87),E.C.ブル-ワ-の『身近なものの科学知識』(1848)などがある。 一方また,S.ピ-プスの『日記』に科学に関する事項が少なくないことを知って,その科学事項を抜き書きして,ピ-プスの『科学日記(1660〜69)』としてまとめる作業をはじめた。この日記には,フックの『ミクログラフィア』(1665)やパワ-の『理学実験三部作』(1663)年が出版されると間もなく入手して読んでいることの記述もある。そこで,17世紀の英国で科学概説書・科学啓蒙書といった本がどのように読まれていたかを探ることができると考えたからである。この本は,世界における科学教育の源流を探るのに恰好の本となっている。 また,それと関係して,ロンドン王認学会の創設過程と初期の歴史を明らかにする物業を進めた。王認学会の創設者たちと物理の概説書・啓蒙書との関係を探るためである。王認学会の創設開係者の悉皆調査も完了した。一方また,クリスマス講演などで有名なファラデ-と大英王認会館の経済的な基礎についても調査を進めて,そのクリスマス講演などによる収入が同会館の運営を支えていたことを明らかにすることができた。 これらの研究成果の一方,当初から作成を計画していた『17〜19世紀の英語による物理学の概説書・啓蒙書・教科書目録』の編集は着実に進んでいる。それは,本研究の完了とともに印刷して,関係研究者に配付するつもりである。
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