チェルノブイリ原子炉における反応度事故において、炉心の圧力管が破壊されるような急激な加圧がどんな機構で発生し、どんな圧力挙動をしたのかについて解析的検討がなされているが、これらは、未だ、実験的に検証されていない。本研究ではこの様に急激な熱入力が加えられた場合の過渡沸騰現象、燃料溶融と分散挙動の詳しい観測とともに発生圧力挙動や破壊エネルギ-について、加熱条件、流体の初期圧力や温度条件および加熱流路の束縛条件の影響を実験的に調べ、これらを基に発生圧力や破壊エネルギ-について、正しい解析コ-ドを確立することを目的としている。 本年度は、大容量コンデンサ-に蓄えられた最大100KJの電気エネルギ-を、燃料要素を模擬した金属棒に放電し、10ms以下の時間でジュ-ル加熱し、燃料要素が非溶融と溶融する場合について、非定常沸騰時の熱伝達特性とともに発生圧力とそれによる機械的仕事量に対する初期系圧力の影響を調べることを目標とし、大容量非定常電源を設計・制作にかかるとともに、既存の非定常電源を利用した最大30KJまでの加熱実験を行った。その結果、模擬燃料が溶融しない場合には、核沸騰伝熱が支配的になる領域に発生圧力や機械的エネルギ-発生のピ-ク値が存在し、それ以上の加熱は過渡的に生じる膜沸騰のため返って減少する事、しかしながら、さらに熱入力が上がり模擬燃料が溶融する条件になると、発生圧力・機械的エネルギ-とも1-2桁飛躍的に増大してくることが解った。すなはち、大きな破壊エネルギ-の発生に燃料の溶融・分散が非常に重要であること等の重要な知見が得られた。 今後は、現在予備試験中の新規製作の大容量非定常電源の調整完了をまって、30KJ-100KJの高熱入力下の実験を続けるとともに長尺流路における実験および観察結果を利用した解析モデルの開発を行なう。
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